野球におけるセンスとはなんでしょうか。
私はそれを「無意識に任せてプレーできること」と定義します。
この無意識とは何か。
センスがないと言われる人は、なぜプレーが下手なのか。
なぜ動作がぎこちないのか。
今回はそんなお話をしていきます。
⇒【守備のスランプ脱出法】
目次
センスがない人の特徴:意識が身体に向いている
「もっと足を上げろ」
「もっと腰を低くして捕れ」
「もっと肩を開かず打て」
そう指導された選手は、どのようなことを意識するでしょうか。
「もっと足をあげよう!」
「もっと腰を低くして捕ろう!」
「もっと肩を開かず打とう!」
当たり前ですよね。
自分にこう言い聞かせながら、プレーをするはずです。
これこそが、センスのない選手を作っている大要因です。
「え、当たり前でしょ?」
と思われた方、そうなんです。それもまた野球界が腐っている証拠です。
身体に意識を向けてプレーすることこそが、センスのない選手の特徴です。
身体を意識することで、セルフ2は死ぬ
「なぜ、身体に意識を向けてプレーすることがいけないか」の説明の前に、軽く知ってもらいたいことがあります。
インナーゲームという本の中にわかりやすい考え方があったので、まずは予備知識としてそれらを紹介します。
プレーの最中に自分に語りかける経験は誰にでもあるはずです。
そんな感じで、僕らは身体の中に二人の自分がいます。
それがセルフ1とセルフ2です。
セルフ1:私 (うるさい上司、意識)
セルフ2:自分自身 (自分の身体、無意識)
セルフ1は小うるさい上司のような存在で、こいつがセルフ2に命令を下すのです。
「もっと足を上げろ」
「もっと腰を低くして捕れ」
「もっと肩を開かず打て」
こんな経験、皆さんもありますね。というか、普通ですよね。
プレーをしている自分に対して、「もっとこうしろ」と言い聞かせる。
それがセルフ1です。
セルフ2は「無意識」のようなものです。神経細胞や脳のシステムとでも思ってください。
大前提として、スポーツはこのセルフ2がやるものなのです。
例えばです。
自転車を5年ぶりに乗ったとしても、難なく乗れるでしょう。
その際、
「バランスをとろう」
「右足と左足交互に漕ごう」
などといった意識はするでしょうか。
しませんよね。これはセルフ2が無意識で運動してくれているのです。
セルフ2はめちゃくちゃ優秀なやつで、一度行った動作を忘れないのです。
しかし、センスのない選手というのは、自分に語りかける回数が多いです。
つまり、セルフ1でプレーしているということです。
センスのない選手の指導した後のプレーを見てみてください。
なんとか、言われたことを直そうとします。
しかし、頰はこわばり、眉はじり上がり、腕と手首の筋肉はこわ張っています。そうなると、すでにスムーズな動きは消えています。
一生懸命意識した結果がこのざまです。
意識をさせることで、セルフ2が死ぬのです。
実は、センスがない人はセンスがないのではなく、意識の方向が間違っているだけなのです。
センスがある人の特徴:意識がボールに向いている
センスがある人の特徴は、意識がボールに向いていることです。
無意識(セルフ2)に任せてプレーするには、ボールにのみ集中することが大切なのです。
決して、意識は身体に向いていません。
だから、セルフ2は邪魔されないのです。
ボールにのみ意識を向けることで、セルフ2が勝手にやってくれる
試しにやってみてください。
バッティングフォームなどは一切気にせず、ボールの縫い目を見ることだけを意識して打つのです。
空振りしたり、打てなかったりしても構いません。
自分の意識は、ボールの縫い目を見るだけ。バッティングは身体が勝手にやってくれる。
これだけで、選手のバッティングは変わります。
センスのある選手というのはこのように、自らの身体を通してプレーを身につけることをずっとやってきたのです。
うるさい監督から言われた、外からの情報で上手くなったのではありません。
プレーをする度に、自分の身体がフィードバックを受け自然に改善していくのです。
自転車に乗るとき、一回一回「次はこうしよう!」などと考えたでしょうか。
違いますよね。
意識は「なんとか乗ること」だけを考えていて、何回も転んでいるうちに自然に乗れるようになったはずです。
野球も同じです。
なぜ、人間の自然上達を信じないのでしょうか。
何も考えていないように見える選手の方がセンスがあるのはこういうことです。
頭では考えることをせず、ボールを見ることに集中しているのです。
⇒【守備のスランプ脱出法】