「あいつは今、無我の境地にいる」
「無我夢中でプレーしている」
「何も考えていないみたいだ」
「自分が何をしているのかすら意識していないみたいだ」
このように例えられる選手は時々現れます。
まさに、「ゾーン」や「フロー」という状態のことです。
今回はそんな、「ゾーン」の説明をしたいと思います。
⇒【守備のスランプ脱出法】
自分を忘れ去った時にこそ、ベストな力が発揮される
まず考えてもらいたいのは、あなたは野球のプレーをする時にどのようなことを考えていますか?
また、何を意識していますか?
「最短距離で打とう」
「もっと腰を回そう」
「フライをあげちゃダメだ」
このように「こんなふうにして打とう」と考えているならば、ゾーンには一生たどり着けません。
真面目な選手ほどうるさい指導者のせいで、ゾーンに入れずパフォーマンスが上がらない傾向が強いです。
かつての私もそんな選手でした。
反対に、ゾーンに入る選手というのは「いかにして打つべきか」などは一切考えていないのです。
ゾーンの選手に共通しているのは、精神部分があまり活動していないということです。
つまり、考えが働いている時は、ベストなパフォーマンスなど発揮されないのです。
これは皆さんも経験があるのではないでしょうか。
色々頭で考えながら打席に入った時と、ただボールにのみ集中して打席に入った時。
ここで注意して欲しいのが、
「何も考えない」というのは「何も意識していない」とは明確に違うということです。
これは重要なポイントです。
意識は高まっているが、思考はしていない
ゾーンにいる選手は、ボールや相手ピッチャー、グラウンドの状況など外への意識が高まっています。
決して、自分に対して「ああしろ」「こうしろ」と指示を出したり、打ち方を考えたり、さっきのミスについて考えながらプレーしている訳ではないのです。(内側への意識)
バッティングで言うならば、意識は自分の体ではなく、ボールにあるのです。

このようにゾーンに入るような選手は自己対話がないため、セルフ2(無意識)に任せてプレーをするので、身体はよりスムーズな動きが成せるのです。
このような状態は、選手が思考をするまで続きます。
思考をしてしまうと、ゾーンは終わってしまいます。
危険なのは、ここで指導者が
「鈴木、今日はいいバッティングをしているな。どこか変えたのか?」
と聞いてしまうことです。
そうすると、選手は思考を始めます。
いい状態のコントロールを試みようとした時に、セルフ1が登場し、筋肉はこわばってスムーズな動きは一瞬にして消えてしまいます。
⇒【センスとは無意識のこと】
無意識の状態とは、焦点が絞り込まれていること
無意識の状態とは、焦点が一つに絞り込まれており、精神がそれに集中していることです。
集中しきっている状態の時には、もはや肉体がどのように動いているかなど、考える余地もないのです。
もちろん、うるさい監督の指導を思い出している余地もありません。
これがスポーツにおけるベストパフォーマンスが発揮され、なおかつ選手がもっとも喜びを感じる瞬間です。
スポーツ本来の楽しみとはこの瞬間にあるのです。
以上がゾーンの説明です。
今の野球界は、指導者が目先の技術習得ばかりを優先し、「ああしろ」「こうしろ」と選手を縛っています。
だから私は、野球界がクソだと言っているのです。
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